低線量被ばくとガンには線形関係

INWAORKS疫学調査の成果

フランス政府の原子力推進政策に対して科学者たちが異議をとなえる声明を2023年6月に発表。

この声明について2023年9月12日、国会で記者会見があり、6名の発表がありました。
この動画はそのうちの一つ、疫学者マリエット・ジェルべ博士による低線量被ばくの発がん性についての発表です。

発表の中でジェルべ博士は、研究成果は基本的には長期間、低線量被ばくに曝される原発作業者に関するものであると言っていますが、「事故時は別として」と言っているように、大事故の後に一般市民が曝される現存被ばくによる低線量被ばくの発がん性を否定するものではありません。博士が事故後の低線量被ばくに言及していないのは、彼女の後の発表が東電福島第一原発事故による環境汚染と20ミリシーベルト基準の問題に言及しているからです。

発表の日本語字幕の書き起こしは動画の下をご覧ください。

皆さん こんにちは

私は疫学者です
フランス国立衛生医学研究所の研究者として
モンペリエがん研究センターでがんの予防に取り組んでいました

大きな問題は低線量被ばくに発がん性が認められるかどうかです
実は このことは2015年からわかっていたのです
有名なINWORKSコーホートについて、最初の結果報告が出版されたからです
皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、米国 英国 フランスの原子力産業の
作業員からなるコーホートです
非常に多くの個人からなるコーホートで、線量計をつけていたために各自の被ばく線量が正確に把握されています
研究のための素晴らしい条件がそろっています

2015年 最初の論文では、5年間で累積5ミリシーベルト被ばくした作業員が骨髄性白血病を発症したと発表しました
そして 最近出版された2本目の論文では、この作業員たちに固形腫瘍が発生したと発表されています

最初の出版から8年経って、受けた放射線量とがんの発生には直線的な関係があることが示されました

直線的な関係とは、最も低いレベルの被ばくでも発がんのリスクがあるということですもちろん多大な被ばくを受けた時よりもリスクは少ないですが、皆無ではないのです

もう一つ重要な発見は、線量率は実際には重要ではないということです
長い間、瞬間的に高い線量に曝されることが重要で危険なことだと信じられていましたが、そうではありませんでした
微量でも5年間に累積した線量は、瞬間的な高い線量と同じくらい危険なのです
低線量被ばくの発がん性に関するこの概念は、基本的に外部被ばくに適用されるもので内部被ばくには同じ程度には適用されません
つまり放射性物質を吸い込んだり摂取した場合のことです
なぜなら、この場合放射線の直接効果に加え、臓器の機能障害が引き起こされるからです

このように8年間にもわたって、低線量被ばくの発がん性と直線関係を実証するための疫学者と物理学者の間の闘いがあったのです

物理学者は私たちの主張を否定するのに、このように言いました
疫学者はデータを単純な関連性で解釈している
しかし、今回はまったく違うのです
私たちは 低線量被ばくの影響があることを示す直線関係を正確に構築しました

コーホートが大規模なので、すべての交絡因子を考慮することができ、この直線関係を示すことができました
というのも いつも言われることですが、たとえばウラン鉱山労働者の場合、喫煙のせいだとか大気汚染のせいだとか言われるのですが、今回はコーホートが大規模で他の曝露に関する正確な情報があり、事実上可能性が非常に高い、放射線被ばくに起因する発がん性を突止めることができました

とはいえ、エクスポソームの概念を忘れてはなりません
ごく少量の放射線に被ばくし、その上に化学農薬を摂取する
そこに放射能汚染が加わると、カクテルのような複合的曝露になり、そのため、がんにかかりやすくなります

もう否定する必要はないのです
もはや タバコなどという交絡要因で立ち止まる必要はなく
逆に リスクの追加と見なす必要があるのです
そのため 電離放射線のわずかなリスクでも、他の曝露が加わると発がん性が非常に高くなるのです

疫学者と物理学者との間で8年にわたる闘いが必要だったのです 
物理学者は私たちの結論を否定し、疫学者は関連性だけに基づいていると言っていたのですが、曝露の多様な要因を含む、これらの大規模コーホートでやっと、交絡因子を考慮に入れながら、この直線関係を構築することができ、低線量被ばくの影響について頑迷な原子力推進派を説得することができたのです

今後はこの問題について、議論の余地はありません
低線量被ばくは発がん性があり、線形関係があります

なので 反原発の友人が低線量被ばくの影響は、まだ論争中だと言ったりするのを絶対に許してはなりません
この点を強く主張します
そんな発言を言うがままにしてはなりません
それは事実ではないのです
低線量でも発がん性があることは判明しているのです

このコンセプトは当然ながら 基本的には原発作業者に関するものです
なぜなら低線量の放射線を浴びるのは原発作業員だからです
事故時は別として、彼らは長期間低線量被ばくに曝されるからです

私が言いたいことの要点は、低線量の放射線に発がん性があることは確かであり、これはもはや議論の余地がなく、確固とした疫学研究によって十分に証明されているということです

______

発表の中で博士が言及している論文は以下になります。

1-Leuraud K et al, Ionising radiation and risk of death from leukemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study. The Lancer Hematology, 22 June 2015
https://www.thelancet.com/journals/lanhae/article/PIIS2352-3026(15)00094-0/fulltext

2-Richarson DB et al, Cancer mortality by cancer after low dose exposure to ionising radiation of workers in France, the United Kingdom and the United States (INWORKS): cohort study. BMJ, 2023; 382: e074520
https://www.bmj.com/content/382/bmj-2022-074520

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